【神否荘の困った悪党たち】第８２話 こんな強気な現行犯初めてだ……【オリジナル小説】

■あらすじ
犬野さんがやってきた。

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第８３話→https://sakatatsunorou.blogspot.com/2020/12/blog-post.html



【第８２話　こんな強気な現行犯初めてだ……】は追記からどうぞ。

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第８２話　こんな強気な現行犯初めてだ……

「――――防犯訓練？」

　神否荘の玄関口に現れた犬のおまわりさんこと、犬野さんと話をしているマンです。

　犬野さんは煙草を銜えたまま「おう、手前らンとこは必要ねェかとも思ったんだがよ、これも病市(ヤマイシ)のルールだからな、決まりにゃ従わにゃならねェ」と心底面倒臭そうに溜め息を吐き出している。

「ごほごほ」紫煙で噎せ返りながらも頑張って応答する俺です。「防犯訓練ってどんな事するんです？」

「まずはアレだ、特殊詐欺って知ってるか？」俺が噎せ返ってるのを見て眉根を顰めた犬野さんが携帯灰皿を出して煙草を揉み消してくれた。優しさが溢れてる。「アレだよ、オレオレ詐欺とかそういう奴」

「あ～最近めちゃんこ流行ってるって噂の」ポン、と手を打つよ。「アレにも訓練がいるんですか？」

「そりゃいるだろ。突然掛かってきたらおめェどうすんだよ。もしもし、オレオレ！」携帯電話を手に持った仕草をして犬野さんが突然若々しい声(若々しく見える人だけど、不老不死で何歳か分からないからね)で俺を見つめてきた。

「あっ、もしもし」俺も慌てて受話器を取る真似をする。「もしかして俺？」

「おッ……」犬野さんが言葉に詰まっている。「いやオレだってオレ！」

「俺かぁ。何だい俺？」「いやそうはならねーだろ！！」犬野さんが架空の受話器を叩きつける仕草をし始めた。何かごめん……

　犬野さんがモダモダと何か訴えたそうな仕草をした後、盛大に鼻息を落として肩も一緒に落としてくれた。もう見るからに俺にガッカリしてる。ほんと申し訳ない……

「まさかここまでアホなやり取りもねェとは思うが……俺もどこまで知能を下げればいいか分からんレヴェルの詐欺だったら、お前はヤバいな」ぼろくそに言われてる。「つー訳でだ。お前みたいな知能がサル以下のクズがここには山ほどいるからな、しッッッかり防犯意識を高めて、悪人から身を守るように勉強させに来た訳だよ俺は」ここまでぼろくそに言う警察官なんているの？？？

「はぁ……」もう泣きそうで仕方ないけれど、確かに俺も防犯意識に関してはガバガバかも知れない。そう思うと、確かにやらねばとも思うね。「じゃあ宜しくお願いします」ぺこりと頭を下げるよ！

　直後、ガァーンッ、と言う何かがぶつかる音が目の前で弾けた。

「話は聞かせて貰ったぜ」

　玄関から外を見ると、犬野さんが乗って来たパトカーに激突した形でナモの車が凹んでいた。

「ナモ～」パトカーがとんでもない事になってるぞ～。「どこで話を聞いてたんだ？？」今来たとこやろ？？

「いやうん、アレだ」歪んだ車の扉を開けてカッコよくポーズを決めるナモ。「流れを感じたっぽ」

「……覚悟は出来てんだろうな……？？」犬野さんがもう直視できない顔で怒ってる。

「おっ、待てよぉ、俺はただ神否荘に来ただけだぜ……？」無抵抗の仕草をするナモ。「あれ？　このパトカー、凹んでない？　どんな雑な運転してんだぁ～」死にたいのか？？？

「テメエが――――」犬野さんが激昂と共に殴りかかる直前、ナモがギラリと糸目を輝かせた。「――――ここには状況証拠しかない、違うかポリスメン？」「――――あ？」

　状況証拠も何も、明らかナモの車がパトカーに激突してるんだけど。

「まぁ聞けよ。俺が運転したって証拠は無い、違うか？」見るからにそれ以外考えられないんですけお……「更に！　俺がぶつけたと言う証拠も無い！　違うか？」まさに現行犯だよナモ……「文句ある！？　何か文句ある！？　言うてみろよみんなァ！」こんな強気な現行犯初めてだ……

　言われっ放しの犬野さんもこれには大噴火を起こして神否荘が地球上から消滅するのも秒読みかと思ったけれど、犬野さん、何故かぷるぷる震えるだけで何も言い返さないな？

「い、犬野さん……？」どないしてん？　と思って声を掛けると、顔を真っ赤にして怒りに震えている犬野さんが見えた。「ひえっ……」

「ぐうの音も、出ねェ……！」え？「こいつの言う通りだ……ッ、俺には、裁けねェ……ッ！」うせやん……

「と言う訳で、何だっけ？　防犯訓練？　俺も参加するお」ほぉーいっと挙手するナモ。「ほら、ポリスメンも二秒で切り替えて業務戻るずい」改めてヤバいなこいつ……

　……と言う訳で、秋の防犯訓練が始まる事になりましたとさ。犬野さんに殺されないようにがんばろー。