2020年11月30日月曜日

【ネトゲ百合】第8話 No薔薇に錯【オリジナル小説】

■あらすじ

ネトゲで好きになってしまった相手は、きっと異性だと思っていた。

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【第8話 No薔薇に錯】は追記からどうぞ。

第8話 No薔薇に錯


◇◆◇◆◇>>ジン<<◇◆◇◆◇

ジン「つかさー、俺に彼氏が出来たらどうすんだよおっさん」

 何の話の流れでそんな話になったのか、チャットの発言をした時点で冷や汗が止まらなくなった。
 時計を見るともう丑三つ時を回っている。寝惚け眼で、胡乱な思考回路で、無意識に漏らしたその一言で、私は急速に覚醒した。
 まさに酔いが醒める感覚に等しかった。アルコールを摂取した事が無くても分かる。血の気が見る見る引いていくのが、感覚として理解できる。
 次に座長が行う発言から目が離せなかった。瞳が充血していく感覚と共に、あらゆる認識がチャットの欄に集中していく。
 もし……そう、もし座長が、私に彼氏が出来る事を何とも思わなかったら。
 脈ナシと見て、私は速やかに撤退して、……今日は学校を休んで寝込もう。
 そんな強迫観念に駆られながら、荒れていく呼気を整える事も出来ずに、涙が浮かびそうになった、次の瞬間。
 チャットログが動く気配がした。

座長「ジン君の彼氏って事は、高校生でしょ? めちや気になるね」

「……!?」

 感情が揺れ動き過ぎて、どんな反応を返せば良いのか、一瞬理解が遅れた。
 私に彼氏が出来る事を気にしているのは、分かる。けれど、彼氏が気になるのか……??
 おっさん、女子高生である私ではなく、彼氏……つまり男子高生の方に興味がある……と??
 ……女の子より、男の子の方に興味がある、……って事??
 私は咄嗟にどう返せば良いのか本当に分からなくなって、手がぷるぷる震えたままスマフォーンを握り締める事しか出来なかった。
 もしかしてこれって……女の子じゃなく、男の子の方に関心が有るって事はつまり……おっさんって……
 ……BL――ボーイズラヴが好きな、おっさんなのか……???
 何だそれ……そんなのって……
 …………
 …………………………
 ……………………………………………………可愛過ぎじゃない???

座長「ってもうこんな時間じゃんーねよねよ」
ジン「うわまじだ。また明日なおっさん!」
座長「ほいほいおやすみー」
ジン「おやすー」

 足早にログアウトしてしまった座長を見送って、私はスマフォーンを抱き締めたままボーイズラヴが好きかも知れない座長の妄想で、今夜は寝付けない予感で胸が埋め尽くされていた。
 やっぱり、そういう話題にも付いていけるように、私もそういう書籍を嗜んでいた方が良いんだろうか……とか考えながら、にやけた頬を隠すように寝返りを打つのだった。


◇◆◇◆◇>>座長<<◇◆◇◆◇

「はぁ~……ビックリしたな……」

 どんな話の流れでそうなったのかまるで思い出せないけれど、まさかジン君の口から「彼氏」なんて単語が出てくるなんて、誰が予想できただろうか。
 男子高校生の彼が、彼氏が出来たらどうするんだ、なんて話題をした事に、あたしはもう胸のときめきを落ち着かせる事が出来なくて、ついついアルコールの摂取が捗ってしまう。
 何かおかしいとは思っていたんだ。男子高校生にしては、あんまりそういう話題に触れなかったし、彼女が云々とも、一言も話してなかったから。
 今回でハッキリした。彼氏が出来たらどうこうなんて、普通言い出す筈が無いもの。
 つまりジン君は……BL――ボーイズラヴが好きな、男子高校生なのだ。
 女の子よりも、男の子に興味が有る、そんな思春期を迎えている子なのだろう。
 だからこんなおっさんキャラにホイホイ懐いちゃうんだと、今更気づいてしまった。
 もしかしたらあたしの事もおっさんだと思い込んでいるのかも知れない。それ故に、魔が差したように慕ってしまっている……そんな気がしないでもない。
 つまりあたしに対して恋慕を懐いているように錯覚しているのは、単純に彼があたしの事をアバター同様のおっさんだと誤認しているからに他ならない。
 何て事は無い。擦れ違いの感情が複雑に絡み合っているだけに過ぎないのだ。
 ……けれど、それでもあたしは、そんなジン君が更に可愛く映ってしまって、もう瞼を閉じる度に彼のアバターが浮かび上がるぐらいには、もう歯止めが効かなくなっていた。
 今の時代、ボーイズラヴが倒錯的だなんて思う派閥は大多数であれど、少なくないだろう。
 あたし自身、そういう人を想う心を否定したくないし、同性同士の恋愛も、応援したいと思ってしまう側の思考回路を有している。
 ただ……ジン君に彼氏が出来てしまったらと考えると、あたしを選んで欲しかったな……とは悔しくなってしまうと思う。
 だからつい誤魔化すようにあんな事を言ってしまったけれど……ジン君、あたしに愛想を尽かしてなければ良いな……
 ……いけない、深酒が過ぎたみたいだ。明日も仕事なんだ、いい加減寝て体を休めよう。
 明夜も、変わらないジン君とチャットしたいからね。……彼氏が出来ていない、ジン君と、ね。

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れさまですvv

    うおぉぉぉぉーこいつは核心ついてきたかぁー!
    と思ったのもつかの間やはり二人は盛大に勘違いをしているのだった…

    めっちゃおしい!!これはかなりキテる!!!
    ジンくんの最初の発言見た時に「ついにこのときが来たのか…」と思ったものw
    おかげでもうしばらく切ない想いを楽しめそうです。
    さんきゅー先生w

    ぁあああーモダモダするんじゃぁー

    今回も楽しませて頂きました!
    次回も楽しみにしてますよ~vv

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    1. 感想コメント有り難う御座います~!

      ですですwww思わせてからの!wwって奴ですwww

      もうだいぶ核心に近づいてはいたのですけれど、互いにまだまだ勘違い・擦れ違いしちゃうと言う…!ww
      ぜひぜひ最後まで切ない想いを楽しんで頂けると幸いです!w
      うへへ!w

      モダモダしてほしいんじゃぁー!w

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~!!

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