2022年4月30日土曜日

【ネトゲ百合】第22話 ほろあまの日〈4〉【オリジナル小説】

■あらすじ
ネトゲで好きになってしまった相手は、きっと異性だと思っていた。

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【第22話 ほろあまの日〈4〉】は追記からどうぞ。

ほろあまの日〈4〉


◇◆◇◆◇>>座長<<◇◆◇◆◇

 結論から言うと、据え膳は頂かなかった。もうその一言に尽きる。
 もう絶縁されても仕方ないと諦めて、ジンちゃんのポーチを漁ってスマフォーンを探し出し、ロックが掛かっていない無防備なそれを操作して、お母上だと思われる方に電話を掛け、最初から最後まで平謝りしながらコンビニまで迎えに来て貰う、と言う地獄を堪能させて貰う事になった。
 ジンちゃんのお母上はあたしに近い感性なのか、ハンドルネームでしか答えられないあたしに、「ああ~、今娘がハマってるゲームのお友達なのね」と納得してくれた挙句、「ウチの子がいつもお世話になってます~、わざわざご連絡も有り難う~」と、ちょっと危機感が足りな過ぎないか?? と思わなくも無いけれど、この娘にしてこの親アリ……って思っちゃったよね……
 その後コンビニの前の車内で待っていたら、ジンちゃんのお母上と合流し、それはもう取引先にも見せた事が無いガチ謝りで頭を下げまくったあたしだったけれど、ジンちゃんのお母上はおっとりと微笑んで。
「まぁまぁ、ウチの子も無事に帰ったきた訳ですし、座長さん、でしたっけ? あなたも悪い事をした訳ではないのでしょう? だったら謝る事なんて無い筈。またウチの子と変わらず遊んであげてくださいね」
 なんて。あたしがジンちゃんの親なら絶対に言わないであろう楽観的な事を言うものだから。
「あ、あの! こんな事をしでかしたあたしがこう言うのも何ですけど、あ、怪しまれないんですか……? 学校の友達ですらない、オンラインで知り合ったような、得体の知れない女を……」
「あら? 私、こう見えても人を見る目は持っているつもりよ」ギラリと瞳を輝かせるジンちゃんのお母上。「応対次第では即通報するつもりでしたし」
「お、おお……」刹那、あたしの冷や汗が限界値を迎えた。
「ここであなたを非難しても何も変わりませんし、況してやウチの子も反省しないでしょう。私は座長さんとウチの子の交友に関してあれこれ口には出しませんが、それはそれとして、今回の件は後でしっかり夫と叱っておきますので、座長さんはお気に病まれないでください」
「は、はひ……」
 しっかりお母さんしてた……って凄まじい後悔に襲われて、居た堪れなさが半端ない事になっていたけれど、ジンちゃんのお母上はそこで咳払いを挟むと、再び穏和な微笑を覗かせた。
「それでもウチの子が、座長さんと遊びたい、交流したいと言った時は、どうか仲良くしてあげてくださいね? 今回の件は、これで互いに何も言わない、で、どうでしょうか……?」
「あ、有り難う御座います……どうかそれで一つ……」
 悪いのは完全無欠にあたしな訳だから、それ以上何も言える事なんて無くて。
 けれど……本当に、ジンちゃんが無事にお家に帰れる目途が付いて、それだけは安堵の念で一杯だった。
 ジンちゃん親子が見えなくなるまでずっと頭を下げていたあたしは、凄まじい疲労感に満たされ、暫く車中で呆っと煙草を銜えて虚空を見つめていた。
 ……本当は、会わない方が良かったのかも知れない、なんて。そんな弱音が芽を出してしまう。
 でも、彼女と会えたからこそ、幸せな事だったり、嬉しい事だったり、悦びが増えたのも、また事実だ。
 何れにせよ、ここから先はジンちゃん次第だ。ジンちゃんがもう、あたしと交流する事は出来ない、と言ったら。その時はすっぱり彼女の前から姿を消そう。
 ……そんな決意したって、すぐに切なくなって悶絶する癖に。
 放心状態のまま部屋に帰って、取り敢えずシャワーを浴びて、何も考えられないまま火の点いていない煙草を銜えて、気づいたらFPにログインしていた。
 何も言わずに去る事だって出来る。アバターを消してしまえば。ラインを削除してしまえば。それっきりの関係でしかないのだから。
「…………はぁ~~~、それが出来たら苦労しないんだよ座長君……」
 言い聞かせる。惚れた弱みと言う奴だし、自分から絶つなんて器用な真似が出来たらここまで拗らせる事も無かった。
 明日はもう欠勤するつもりで、冷蔵庫から缶ビールを取り出してくる。自棄酒……って訳でも無いけれど、今夜は飲まずにいられない気分だった。
 ジンちゃんとの思い出を振り返りながら、アルコールを呷る。悪い酔い方をしている気がしたけれど、今夜だけはそれでも構わないだろう。
「……恨むぞもぺ子~……」
 あらゆる責任をもぺ子に転嫁してしまいたくて、でも転嫁したからと言って何も解決しない事は分かっていて。
 ダラダラと独り言を呟きながら缶ビールの空を増やしていると、ジンちゃんがログインしたログが視界に飛び込んできた。
 
ジン「おっさん!! ごめん、俺!」

 その一言を観た瞬間、あたしの悩みはどこかに吹き飛んでいった。
 その後、あたしが何をチャットで発言したのか、イマイチ記憶が残ってないけれど、ジンちゃんの様子から察するに、……まだお叱りを受けていないのか、或いは受けても変わらずなのか、それは判然としなかったけれど、……いつものジンちゃんが見れて、もう昂る感情が何も言えなくさせていた。
 ジンちゃんがログアウトしたのを見て、あたしもログアウトして、気づいたら朝だった。
 雀の囀りが遠くで聞こえる。鏡を見るまでも無くボロッボロだと判るぐらいに疲弊していたあたしはその日、連絡して仕事を欠勤した。
 その後、夕方まで爆睡したあたしは、何かが吹っ切れたのか、それとも何か大事なものを失くしたのか、何故だかジンちゃんと会える気がして、もぺ子のいる喫茶店に向かうのだった。

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れさまですvv

    まずは【ネトゲ百合①】通販開始おめでとうございます!!全国1億2千万が待ちに待ったこの瞬間を無事に迎えることができ、尊死寸前でございます。

    そしてひと月ぶりに更新の今回、あの日の座長さんの心模様が描かれたなんともモダモダするんじゃぁ~wなお話に「これよ、これ!」と思わず合いの手を入れずにはいられませんでした。よきw

    それにしても、ジンくんのお母様かっこよくない?w

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv


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    1. 感想コメント有り難う御座いまする~!(´▽`*)

      通販開始、何とかかんとか間に合いました!! 本当に有り難う御座いまする~!!😭 全国1億2千万もの方が!?!?!wwwwww嬉し過ぎてヤバいです…!!!感謝…!!!(´▽`*)

      もうひと月も経っててまず驚きです…!ww ほんとあっと言う間だ…!ww 「これよ、これ!」と言って頂ける内容に仕上がっていて満足致しました…!✨

      ジンくんのお母様、ちょっとカッコよくし過ぎたかも知れない…!wwwww(笑)

      今回もお楽しみ頂き有り難う御座いました~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~!┗(^ω^)┛

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